北海道自然観察協議会は自然観察指導員の集まりです。

北海道自然観察協議会

 

2024年6月の行事一覧

石狩海岸・志美三線観察会

開催日 2024年06月01日(土)
観察地 石狩市防災ひろば~日本海まで往復
テーマ
一般参加者 10名(中央バス利用は5名、自家用車5名)
指導員 4名 五十嵐一夫 安田秀子 安田秀司 石岡真子

観察会の感想・反省
 石狩海岸は、生物多様性に富んだ海辺の自然環境が大規模に残る全国的にも貴重な自然海岸です。延長25㎞に及ぶ海岸砂丘地形、大規模な海浜植物群落、日本最大級のカシワ(①)を主体とする天然生海岸林(②)(幅約500m)の帯状構造を石狩湾に沿って完全に備えていることは奇跡的ともいわれ、きわめて価値は高いのです。
海岸林以外の海域、海岸草原、海岸林背後の野原などに、風力発電施設、太陽光パネル、新幹線トンネル掘削残土などが散見され、自然景観の様変わりのみならず生物多様性の根幹を揺るがす事態になっている気がしています。
志美3線は、石狩湾新港工業地域の北東側に位置する市道です。地名の志美(しび)はアイヌ語の「シピシピウシ」(トクサ(木賊)のいっぱい生えている所)に由来します。
観察会は、石狩海岸の植生の帯状構造を横断的(③)に進み、海岸林の中の砂堤列のくぼ地に雪解け水が溜まってできる「融雪プール」(④)を確認しました。キタホウネンエビ(日本の石狩海岸林と青森県の一部でしか確認されていない淡水のエビ)が生息しています。雪融け水がたまる時期(4~5月ごろ)だけ姿を現し、他の時期は卵で土の中で過ごします。
最高点の第2砂丘(標高10m)に到達し、浜辺の景観とともに石狩湾新港のLNG火力発電所、LNGタンク群、石狩湾洋上風力発電所などの風力発電施設が見えます(⑤)。
海岸草原の海浜植物群落の観察(⑥)の後、砂浜から海へ出ました。
 観察した海岸林の植物:カシワ、ミズナラ、イタヤカエデ、キンギンボク、ハマナス、マユミ、コマユミ、トクサ、サワフタギ(⑦)、クゲヌマラン、ヒメイズイなど
観察した海浜植物:コウボウムギ、ハマハタザオ、ハマニガナ、テンキグサ(⑧)など
 観察した鳥:ウグイス、ヒバリ、ムクドリ、トビ、ホオアカ、ノビタキなど
 石狩海岸は、北海道自然環境保全指針で定める「すぐれた自然地域」に指定されています。海岸林については「生物群集保護林」(石狩浜海岸林)(林野庁 北海道森林管理局)が設定されることになっているのですが、海岸林だけでなく海岸草原についてもセットで保護してほしいと思っています。

(石狩市 石岡真子)

①カシワの葉裏(花殻(♂)と昨年の実の殻斗)

②カシワを主体とする天然生海岸林

③石狩砂丘の断面と植生変化

④融雪プール

⑤第2砂丘上から展望する

⑥海浜植物群落の観察

⑦サワフタギ

⑧テンキグサ
2024年6月1日