北海道自然観察協議会は自然観察指導員の集まりです。

北海道自然観察協議会

 

2024年7月の行事一覧

小樽市 「蘭島海岸と忍路」観察会

開催日 2024年07月07日(日)
観察地 蘭島海岸と忍路
テーマ
一般参加者4名 指導員6名
 午後から雨の予報。午前8時30分JR蘭島駅を出発。川沿いの護岸のキリは今年花をつけた形跡がなく樹勢が弱い様で心配です。毎年逢うのでお馴染みさんの様な感覚になります。浜に面した道に出ると良い香りが漂います。ハマナスは午前中の香が一番強いそうです。鮮やかな紅色のハマナスと白いハマナスが混在しているのを見て参加者から『赤い花と白い花、香りが違うのかな?』の声が。自然に対する不思議や興味を大切にしたい! しかし白いハマナスが咲いているのは某企業の海辺の保養所敷地内。許可無しには入れません。来年に備えて観察可能な白いハマナスの花、探しておこう。
 いつの間にか青空が広がり、砂浜で暖められた空気の熱さと海の匂いを感じます。テトラポッドの上では、羽を広げて乾かしているウミウの横にカモメが休んでいます。コウボウシバの雄花と雌花。ハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマニンニク、オカヒジキ、オニハマダイコンは実をつけています。下見の時に見つけたハマツメクサの小さな白い花は咲き終わっていました。
 西の余市方向の空から近づいてくる雲に追いかけられるように進みます。海に面した崖の上空をトビが旋回しています。先程の晴れ間で暖められた空気が上昇し、冷えた空気が下降。気流の動きで涼しい風を感じている事を指導員が解説します。観音坂の入り口に着くと、上空の雲と樹木の陰になり浜の直射日光とは一転、日射しが弱まりました。参加者が楽しみにしている坂の途中の苺畑。残念ながら農家の方が不在で今年はイチゴ狩りは無し。みずみずしく真っ赤に実る苺を横目に通過。小鹿菊のバニラビーンズに似た匂い。エゾニワトコはアイヌ民族が魔除けに用いたという匂い。五感を駆使して観察します。林の中から小樽市の鳥、アオバトの声が聴こえてきます。山道ではヤマグワの実、コクワ、ミツバアケビ、スモモ(今年は豊作の様子)、シャク蛾の仲間、シジミ蝶の仲間、セリ科植物の葉にキアゲハの終齢幼虫。隣の葉は硬い葉脈しか残っておらず、旺盛な食欲に一同感心。
 山道を下ると神社の例大祭のお囃子が聴こえてきました。忍路神社は鰊漁で栄えたオショロ場所時代の遺構です。港の岩壁では1000万年~500万年前の海底火山の噴火で出来た枕状溶岩の断面や、火山性ガスが出た時の穴の空いた安山岩を観察。今見上げている場所が大昔は海の底だった。海底火山噴火の中心地だった忍路の地形の成り立ちには壮大なドラマがありました。
 初夏の蘭島.忍路は、人も植物も昆虫も鳥も自分の居場所で懸命に命をつないでいました。
 最後に幕末の探検家、松浦武四郎が忍路で詠んだ和歌を御紹介します。『見あぐれば すもも からもも(杏) 桃桜 わかぬばかりに 咲き満ちにけり』 武四郎が深く感動した蘭島忍路の風景を、皆さんどうぞ見にきて下さい。

(吉田 陽子)

蘭島駅前通り

忍路

忍路 枕状溶岩

2024年7月7日